2017年8月27日

言語技術教育 実践校リスト(初等・中等教育のみ)

言語技術とは、『思考を論理的に組み立て,相手が理解できるように分かりやすく表現する』[1]ための技術である。
この言語技術は、多くの国々では義務教育の中で母国語教育のカリキュラムとして指導されている[2]
しかし、日本では文部科学省にて検討されつつあるが[3]、義務教育には導入されておらず、一部の学校のみで独自に指導されている状況である。

現在(2017.08.27時点)、日本国内で言語技術教育を実践している学校として、 麗沢中等・高等学校聖ウルスラ学院などがある。
今回、これらの学校以外に実践校がどのくらい存在するのか、ふと疑問に感じた。
そこで、言語技術教育を実践している学校を調べ、リストアップする事にした。

本記事では、日本国内の初等・中等教育において言語技術教育を実践している学校の名称と、それぞれの教育の概要を記載する。


選定基準

以下、本記事に記載するにあたり、選定した基準を記す。

  • 本記事で言う言語技術教育は、以下の内容のいずれかを実施しているものとする(つくば言語技術教室より引用)。

    • 問答・議論の技術

    • 再話の技術

    • 要約の技術

    • 説明・描写・報告の技術

    • 論証の技術

    • 絵とテクストの分析と解釈・批判の技術(クリティカル・リーディング)

    • 小論文の組み立て技術

    • 論理的思考力の育成

    • 批判的思考力(クリティカル・シンキング)の育成

  • 以下のどちらかを満たしていること。

    • 公式サイトやWebニュース等に、上記の内容に準じた言語技術教育を実践している記載があること。

    • 内容は不明であるが、公式サイトやWebニュース等に言語技術教育を実践している記載があり、かつ、つくば言語技術研究所と関わりがある(講習や講演を受けている)こと。

  • リストアップする学校は、初等・中等教育(小・中・高)のみ。

  • 高等教育(大学など)は、除外する。
    → 高等教育の場合、カリキュラムとして実施はしていなくても、卒業研究等で言語技術に近い内容が指導されるので(特に理系)。
    → (高等教育も含めると、数が多すぎて調べきれないという事情もある…​)


言語技術教育を実践している学校

北海道

(見つからなかった)

東北

宮城県

[私立] 聖ウルスラ学院英智小学校・中学校

つくば言語技術教育研究所のWebサイトにて、同研究所の指導を受けていることが、明言されている学校。

言語技術教育の扱いは、独立した科目として、全学年で毎週1回実施されている。
教育の内容は、以下のページに詳細にまとめられている。

関東

東京都

[私立] 桐朋女子中学校・高等学校

つくば言語技術教育研究所のWebサイトにて、同研究所の指導を受けていることが、明言されている学校。

言語技術は、英語の科目にて、週1回で実施されている。
また、現時点では、中学三年生および高校一年生でのみ、言語技術が実施されている模様。
これは、同校の言語技術教育は、昨年度2016年から開始したばかりであるためと思われる。

教育の内容は、中学三年では「問答ゲーム」・「説明〔描写〕」、高校一年では「説明〔描写〕」・「絵の分析」を実施している。


[私立] 東京女学館中学校・高等学校

つくば言語技術教育研究所のWebサイトにて、同研究所の指導を受けていることが、明言されている学校。

言語技術は、英語の科目にて、中高6年間に渡り、実施されている。開講頻度は不明。
教育の内容は、詳細は不明だが、欧米の言語技術(Language Arts)をベースとし、独自のカリキュラムを実施しているとのこと。


[私立] 創価高等学校

言語技術は、希望者のみを対象とした集中講義としておこなわれている。
(ただ、「来年度よりSGHアソシエイトの取り組みとして全校でスタートする」という記述があるため、今後は扱いが変わると思われる。)

教育の内容は、問答ゲームをおこなっている。
また、この学校独自の言語技術教育として、「往還作業」というトレーニングも実施している。
このトレーニングの目的は、「第二言語を使うことで余計な情報や言い回しをはぶき、より端的に本質的な議論を行えるようにする」とのこと。
(トレーニングの詳細な内容は不明。)


[私立] 芝浦工大附属中学高等学校

つくば言語技術教育研究所のWebサイトには記載されていないが、同研究所の指導の元、言語技術教育を実施している学校。

言語技術は、中学1・2年時に、独立した科目として実施されている。
開講頻度や、中学3年以降に実施されているかどうかは、不明。
教育の内容は、問答ゲーム、論証、再話、絵の分析など。


[私立] 玉川学園 幼/小/中/高等部
公式Webサイト

玉川学園

つくば言語技術教育研究所のWebサイトには記載されていないが、同研究所の指導の元、言語技術教育を実施している学校。

言語技術は、幼稚部から高等部まで、12年間を通じて実施されている。
独立した科目なのか、それとも国語や英語にて実施しているのかは、不明。
教育の内容は、以下のページに詳細にまとめられている。


[公立] 日の出町立 平井小学校

つくば言語技術教育研究所のWebサイトには記載されていないが、同研究所の指導の元、言語技術教育を実施している学校。

言語技術の開講科目や開講頻度、開講年次、教育内容などは、不明。

埼玉県

[私立] 大妻嵐山中学校・高等学校

2018年9月現在、新たにつくば言語技術教育研究所の指導を受け始めた学校。
同研究所のトップページ http://www.laitjp.com/(2018年 9月 24日 月曜日 18:29:56 JST 参照)に、提携している旨が記載されている。

ただし、学校のWebサイト上には、言語技術教育に関する情報は、掲載されていない。
言語技術の内容、実施年度・科目等も、不明である。

しかし、「ニュース」カテゴリの以下のページにて、言語技術に言及している内容が見つかった。

前述の記事によれば、同校の教員が言語技術の研修を受講した、学校説明会にて言語技術教育について言及したことが分かった。
これらの内容より、同校が言語技術教育を実施していることは、ほぼ間違いないと思われる。

千葉県

[私立] 麗沢中学・高等学校

過去に、つくば言語技術教育研究所の指導を受けていた学校。
現在は、同研究所の教育メソッドを用いて、独立して言語技術教育を実施している。

言語技術は、中学1年から高校1年まで、4年間を通じて実施されている。
独立した「言語技術科」の扱いで、週1時間おこなわれている。
教育の内容は、以下のページに詳細にまとめられている。


[私立] 市川中学校・高等学校

アクティブラーニングの一環として、言語技術教育を実践している学校。
また、つくば言語技術教育研究所から、研修や教育を受けていた記録もある。

言語技術の開講科目、開講頻度、開講年次、教育内容などは、不明。
ただし、下記ページには、「国語科授業での実践検証」との記載はある。

また、学生への教育だけではなく、教員側の言語技術研修も、おこなっている模様。


[私立] 和洋国府台女子中学校・高等学校

過去につくば言語技術教育研究所へ研修・講演を依頼しており、内容は不明だが、言語技術教育を実施している学校。

言語技術教育は、平成29年度から新たに取り組み始めたとのこと。
取り組み始めたとの記載があるだけで、開講科目、開講頻度、開講年次、教育内容などは、不明である。

神奈川県

[私立] 慶應義塾横浜初等部
公式Webサイト

慶應義塾横浜初等部

つくば言語技術教育研究所のWebサイトにて、同研究所の指導を受けていることが、明言されている学校。

言語技術の開講科目や開講頻度、開講年次、教育内容などは、不明。
ただし、以下のページによると、恐らく国語の一環として実施されている模様。


[私立] 森村学園 中等部

つくば言語技術教育研究所のWebサイトにて、同研究所の指導を受けていることが、明言されている学校。

言語技術は、中等部の3年間にて、毎週1回実施されている。
科目の扱いは不明。ただし、下記のWebページ1には『正規の授業として週1回行われている言語技術』との記述があるため、恐らく独立した科目だと思われる。
教育の内容は、下記2つのページに、詳細に記載されている。

中部

(見つからなかった)

近畿

奈良県

[私立] 奈良育英中学校・高等学校

この学校では、中学・高校のどちらも、コース毎に異なった教育が実施されている。
コースは、中学では2種類、高校では4種類である。

公式サイトのニュース記事に拠れば、以下のコースで言語技術教育を実施している。

  • 中学: 中学選抜コース

  • 高校: 国際理解Gコース

  • 高校: 高大連携Sコース

また、2017年度入学生より、総合進学コース教育課程でも、言語技術教育がおこなわれる模様。

上記以外のコースで、言語技術を実施しているのかは不明。
ただし、以下のニュース記事に「全校生徒に広げるべく」という記述があるため、今後は全コースでも実施されると思われる。

各コースの言語技術教育の内容は、それぞれ以下のニュース記事を参照のこと。

言語技術の扱いは、中学選抜・国際理解Gコースでは、独立した科目として、毎週1コマ言語技術の授業を開講している。
高大連携Sコースでの扱いは不明。
ただ、1, 2, 3年を通じて実施しており、卒業論文の中間発表にも関わっているため、推測だが毎週1コマの頻度だと思われる。

中国

岡山

[公立] 岡山県立 倉敷天城中学校

つくば言語技術教育研究所から、研修や教育を受けてた事がある学校。

言語技術は、1年生から3年生の3年間を通じて、毎週1回実施されている。
教育内容は、下記資料に詳細に記載されている。
(つくば言語技術教育研究所が作成した教材を使用しているとの事。)

広島

広島県のWebサイトによれば、広島県では、県を上げて言語技術教育を実践している。
実践している学校は、県内全ての学校ではなく、一部のパイロット校のみである。
また、パイロット校は、大きく分けて2種類、タイプ1とタイプ2がある。
違いは、言語技術の実施科目である。
タイプ1では、独自の科目として、言語技術を実践している。
タイプ2では、国語や道徳、総合科目など、各教科の中で実践している。

以下、対象校を、タイプ毎に列挙する。
各学校の教育内容は、数が多すぎて調べきれないので、割愛する。
ただし、下記Webページによれば、問答ゲーム、再話、描写・説明、絵の分析などがおこなわれている模様。

タイプ1
  • [公立] 廿日市市立宮園小学校

  • [公立] 熊野町立熊野第一小学校

  • [公立] 安芸高田市立来原小学校

  • [公立] 三原市立幸崎小学校

  • [公立] 福山市立深津小学校

  • [公立] 府中市立広谷小学校

  • [公立] 庄原市立東城小学校

  • [公立] 大竹市立玖波中学校

  • [公立] 東広島市立黒瀬中学校

  • [公立] 北広島町立大朝中学校

  • [公立] 竹原市立忠海中学校

  • [公立] 福山市立神辺東中学校

  • [公立] 庄原市立東城中学校

  • [公立] 広島中学校


タイプ2
  • [公立] 呉市立渡子小学校

  • [公立] 東広島市立高美が丘小学校

  • [公立] 江田島市立中町小学校

  • [公立] 尾道市立上川辺小学校

  • [公立] 尾道市立因北小学校

  • [公立] 神石高原町立油木小学校

  • [公立] 広島市立鈴が峰小学校

  • [公立] 廿日市市立大野中学校

  • [公立] 呉市立両城中学校

  • [公立] 安芸太田町立筒賀中学校

  • [公立] 世羅町立世羅中学校

  • [公立] 府中市立第二中学校

  • [公立] 三次市立三次中学校

  • [公立] 広島市立城山北中学校

  • [公立] 忠海高等学校

  • [公立] 廿日市西高等学校

  • [公立] 広島工業高等学校

四国

(見つからなかった)

九州

長崎

[私立] 長崎県 長崎日本大学中学・高等学校

知人からの情報。長崎日本大学中学・高等学校は、つくば言語技術教育研究所にて研修を受けた実績がある。
言語技術は、放課後の補修科目として、週2回実施している。
全学年を通じて実施しているのかどうかは不明だが、少なくとも中学1年で言語技術教育をしている記述がある。
教育の内容は、現時点では問答ゲームのみ。

(上記ページには、教員が三森氏に指導を受けている記述もある。)

言語技術教育を実践していると思われる学校

こちらは数が少ないので、地域毎の分類はせず、単純に列挙する。

  1. [公立] 広島県 福山市立水呑小学校

  2. [公立] 広島県 尾道市立御調中央小学校

  3. [公立] 高知県 香美市立山田小学校


あくまで推測だが、1-3の学校、水呑小学校・御調中央小学校・山田小学校の3校では、言語技術教育を実践していると思われる。
その理由は、上記の学校に所属している教師が、以下の言語技術に関する研究会にて、講師を担当しているから。

上記研究会の内容は、問答ゲーム、5W1H視点での話の解釈、要約・報告、絵の分析、説明の順序、などであるそう。
これらの内容は、(三森)言語技術で実施される内容と同様であるため、上記研究会で扱っているのは、言語技術と見て間違いない。
そのため、この研究会の講師が所属している学校では、言語技術教育が実践されているのではないかと考えた。
ただし、学校単位で・カリキュラムとしてではなく、あくまで教師が担当する授業内の一環として、という可能性も高いかもしれない。

ちなみに、各学校の公式Webサイトを参照したが、言語技術に関する情報は、記載されていなかった。

参考Webサイト

雑記

  • 他にも言語技術を実践している学校が判明すれば、その都度追記していく。

  • 「言語技術教育の実践校」といっても、今回作成したリストは、実質的には「三森言語技術」になってしまった。
    → とはいえ、現時点の日本で唯一体系だった手法が確立されているのは、三森言語技術なので…​ それほど問題は無いかも。
    → というか、三森式以外で、体系化された言語技術教育法って、日本にあるんだろうか?

  • 広島県が、県を挙げて言語技術を実践しているのは、ちょっとびっくり!
    → 各学校にある程度教育の裁量がある私立なら分かるけれど、公立で積極的に導入しているというのが、個人的にとても驚き。

  • 倉敷天城中学校が、公立であるにも関わらず、独自で言語技術を実施している点が、ちょっと気になる…​
    → 広島県の場合、県を挙げて取り組んでいるので、公立にも関わらず実践しているのは分かる。
    → でも、天城の場合、岡山県が言語技術に取り組んでいる訳ではないので…​
    → 公立学校なのに、学校単独で独自の教育を実践できるような、何か裁量でもあるんだろうか?


1. http://www.laitjp.com/index.html - つくば言語技術教育研究所トップページ
2. 『大学生・社会人のための言語技術トレーニング』 pp3-6、三森ゆりか、大修館書店
3. http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/036/shiryo/07081717.htm - 言語力育成協力者会議(第8回) 配付資料:文部科学省
Tags: 言語技術
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